2005年に竣工した、千葉県市川市の二世帯住宅のご相談。
計画当初からの相談と実際に住宅が実現していくなかでの相談と、進行や決断のチェッキングが頻繁におこなわれました。振り返りますと、居心地配慮空間のプランニング手法が実践的に試みられていたことに気づきます。
まず当初、市川市の郊外のさほど広くない一軒の住宅地に住む親ごさんから相談を受けました。その家は30年ほど前にできた、埋め立て地の新興住宅地にあって、時間の割には老朽化も目立ち、そろそろ立替えの時期でもありました。
子供も巣立ち、出ていってしまったけれど、ひとりの子供が家族を連れて一緒に住みたいと戻ってくる意志をあらわにしたところからはじまったのでした。
親ごさんの生活ぶりと家が合わなくなっていることもありましたし、子供はそろそろ自分の持家を借金してでも持ちたいと思うようになりました。
今後の親ごさんの生活、若い家族の生活、を考えたらどこに住んでどのようにくらしていけばいいのか。古い家を建て直して一緒に住めばいいのか、このままにしてすむのか。若い家族はまた別に暮らした方がいいのか。
仮にこのような漠然とした相談でも、銀行や不動産やさんや、建築家などが知り合いにいれば、それらの人に相談をします。そして相談の結果はおおむね新しく家をたてなおして何とかする、と言うことに落ち着きます。いま挙げた相談相手は等しくみんなお仕事を求めているので、そのような方向が先に答えとして在ります。
しかし、お金のことを考えながらも、年輩者、若い家族のそれぞれの「人生上の居心地」を考えていったとき、どのような答えが導き出されるのかをまず先に考えてしかるべきなのでしょう。自分の人生にとって、いまどのようにしていくのが得策なのか。そこでは必ずしもお金を第一に考えることにもならない可能性もあるのです。
人生上の居心地となった時、自分を見つめることも必要になってきます。そうしたとき、なかなか客観的になれず、他人のほうがよく見える場合も多いようです。
相談はそんな根本的なところから始まります。
そして仮に親の世代と子供の世代が一軒の家に住むことになったとしても、それはそれで、お互いが居心地良く一緒にに住みづづけるのはなかなか難しく、多くのケースで居心地悪く過ごしつづけ、遂には破たんしてしまうこともあることを私たちは知っています。